「おれたち ともだち」シリーズ全レビュー。内田麟太郎・作、降谷なな・絵。大人も泣ける絵本はこれだ!
子供に読み聞かせをする絵本は何にしようかと迷っているママ&パパさんへ、
私が実際に読み聞かせをしていて思わず泣けてきて読めなくなってしまった絵本「おれたち、ともだち」シリーズをご紹介したいと思います。
おれたちともだちシリーズとは
おれたちともだちシリーズは現在13巻発行されている絵本です。
寂しがりやのキツネ、実は心優しいオオカミ、そして森の仲間達との友情をテーマにした物語。
我が家では息子が2歳ぐらいの時から読み聞かせをしており、小学校低学年まで読めると思います。
ちなみにうちの息子の小学校2年生の国語の教科書にも「あしたもともだち」が載っています。
友達に対しての関わり方が色々なアプローチで描かれているので、子供達にとっても為になる内容になっています。
子供達にも為になり、読み聞かせをしてあげている親の方も泣けてくる、そんな絵本をお探しの親御さんに是非ともおススメです!
作者プロフィール
内田麟太郎・作
(うちだりんたろう)
独自の作風で活躍、キャラクターの微妙な心情や友達との距離感が見事に表現されていると思います。
他作品に「さかさまライオン」「がたごとがたこと」等
降谷なな・絵
(ふりやなな)
大胆な色使いと個性的なキャラクターが魅力的、心情を表現する絵がジーンときます。
他作品に「めっきらもっきらどおんどおん」「ちょろりんのすてきなセーター」等
「ともだちや」
ともだち 1時間100円
ともだち 2時間200円
キツネがともだちやと称して森を回ります、
そこえオオカミから声がかかるのですが、、、
友達というのはお金で買うものではないし、無理して付き合うものでもない。
オオカミとの本当の友情が生まれる物語。
無理して友達として付き合った熊と別れた後、200円を手にしたキツネの姿がとても寂しく映ります。
私たちも無理して人と付き合う場面は良くあると思います。そこが見事に表現されています。
最後にオオカミが自分の宝物のミニカーを渡すところがじんときます。
「ともだちくるかな」
親友の狐が誕生日会に来るのを楽しみに待っていたオオカミ、でも待っても待ってもキツネは一向に来ません。
寂しすぎてオオカミは「こんな思いをするなら、心なんていらない!」と心を捨ててしまいます。そこにキツネがやってきて、、、
寂しさを紛らわす為にオオカミが色々試すのですが寂しさは変わらず、涙がポツリと溢れるシーンは大人の私も泣けてきました。
子供に呼んであげていたのですが、涙で読めなくなってしまいました。
とても切ないですが最後は心温まるお話です。
確かに寂しい気持ちが続くと心なんてなければ楽なのにと思う事もあるかもしれません。
でも寂しい気持ちも楽しい気持ちもあってコロコロ変わるから良いのだというメッセージが込められた作品。
私が「おれたち、ともだち」シリーズを好きになった最初に読んだ作品です。
「あしたもともだち」
キツネとオオカミが散歩していると遠くでくまが倒れているのを発見します。オオカミはくまの事が心配ですが、オオカミといえば森一番の乱暴者というイメージがあるので声を掛けられずにいました、ところがオオカミは居ても立っても居られず一緒に遊んでいたキツネに突然「帰る!」と言い出し帰ってしまいます、、、
本当はやりたい事があるのに「自分のイメージじゃないから」と恥ずかしがって出来ない事って現実にもあると思います。普通だったら人の目を気にしてそのやりたい事を飲み込んでしまうところです。
オオカミもそんな葛藤に揺れています。
くまの事が気になり、意を決してキツネに別れを告げるところはキツネの事を思う気持ちも伝わりジーンときます。
オオカミがくまの看病をしているとわかってもからかう事なく、知らないふりをしてあげるキツネの心意気もほっこりします。
「ごめんねともだち」
いつものように遊んでいたオオカミとキツネ、遊んでいたゲームで負けが続いていたオオカミ、ついカッとなって怒鳴り喧嘩になってしまった2人、その後謝りたくてもなかなか謝れない2人ですが、、、
怒鳴ってしまったあと我に帰ったオオカミが後悔するシーンや、その後の2人の距離感が切なくなります。
ついカッとなって言い過ぎてしまったり、謝りたいけど謝れない、という気持ちは誰しも経験があると思います。そんな心情が見事に表現されています。
最後にひょんな事がきっかけで謝るシーンもじんと来ます。
私たちも謝るのって何かキッカケが必要ですよね。
「ともだちひきとりや」
本当は仲が良いイノシンとイタチが喧嘩ばかりしています。
それを見かねた狐がオオカミに相談してともだちひきとりやをはじめます。
いらなくなった友達を干し魚と交換でひきとるというもの、さっそくイノシンに頼まれてイタチをひきとるのですが、、、
喧嘩の仲介を真正面から止めに行くのではなく、誰も傷つける事なく気が付けば仲直りしている、というとても面白いアイデアで仲直りをさせるところがとても良いです。
無理やり人の気持ちを変えさせるのではなく、あくまで自分から変わろうと促すあたりがとても大事だと思います。
引くに引けなくなったイノシシがひきとりやに傲慢な自分を引き取ってくれと言い、顔を赤らめるシーンが微笑ましいです。
大人の世界でもこんな風に上手いこと言って仲介をしたいものです。
「ありがとうともだち」
海に行った事がないキツネにオオカミが海の話をしてあげます。そしてキツネのために大きなカジキを釣ってやると言い、次の日海へ行きます。カジキを本でしか見た事がないオオカミは
キツネを喜ばそうとしてついた嘘を本当の事にしようと頑張るのですが、中々上手くいきません、とうとうキツネを喜ばす事が出来なかったオオカミは「ごめんな」と呟くのですが、、、
夕日が沈む海をバックにキツネが言う言葉にジーンときます。そしてそこに佇む2人。
オオカミがキツネの事を思ってしてくれた事全てがキツネにとってはかけがえのないものだったのです。
それをわかっているキツネのオオカミに対する思いに読んでいるこっちも胸が暖かくなります。
相手を感動させるのは結果がどうと言うのではなく、相手を思う気持ちだなと改めて気付かされます。
「あいつもともだち」
冬ごもりをするクマたちとしばらくの間お別れ、そこにはヘビもいたのですが苦手意識からお別れの言葉をかけられずにいたキツネ。
冬の間、オオカミと楽しく遊ぶ間もヘビの事が気になるキツネ。
そんなキツネの気持ちに気付いたオオカミがいい事を思いつきます。
春になってヘビが穴から出てくるのですが、、、
キツネの後悔、「あの時声をかけていれば」
誰しもそんな後悔はした事があると思います。
楽しい時でもふっと心によぎる後悔。
キツネの切ない気持ちが伝わってきます。
そしてそんなキツネの気持ちに気付くオオカミの心意気もとても嬉しくなります。
ヘビが冬眠中に見る夢も1人ぼっちの寂しい気持ちが表現されていて切なくなります。
最後にはキツネとオオカミの粋な計らいでヘビもとても嬉しい気持ちになります。
とても爽やかな終わり方で気持ちがほっこりします。
「ともだちおまじない」
語呂がよい言葉に合わせて色々な仲間達のお話がテンポ良く紹介されるお話、
森に住む仲間達の春夏秋冬を通した姿が描かれ、オオカミとキツネ以外の仲間達の姿が見られるので「おれたち、ともだち」シリーズの世界観が広がります。
またオオカミとキツネにも色々な事があったんだなとわかる内容なので2人のキャラクターにもますます愛着が湧きます。
最後の雪一面の月夜の中で森の仲間が遊んでいるシーンも、しみじみして良いです。
物語がダイジェストのように展開するので、他のシリーズとは違った作風です。
「きになるともだち」
やまねさんにあってからというもの、オオカミの様子がおかしくなります。
いつも変な歌を歌いながら気持ちは上の空、そうオオカミは恋をしていたのです。
そんな姿をみたキツネはやまねさんを誘って月見をしようとオオカミを誘うのですが、、、
恋に落ちた時はみんなこうなるものだと思います。自分でも何を言っているのかわからないぐらい有頂天になり、いつもその人の事を考えてしまう状態。
恋を知らない人から見たら何事かと思います。
そんなオオカミの事を周りの仲間が見守る姿も微笑ましいです。
やまねさんがオオカミの手のひらで眠りながら
一緒に満月を眺めるシーンがとても良いです。
「ともだちごっこ」
森に引っ越してきたばかりの女の子テン、笛が上手な彼女。
その笛の演奏をどうしても聴きたいキツネは、
「3日間私だけのともだちになってくれたら聴かせてあげる」とテンに言われ約束してしまうのですが、、、
女の子特有の友達感覚が上手く表現されていると思います。
グループを作ったり、友達と友達じゃない子をはっきり区別したりする感覚です。
笛の演奏を聴きたいキツネがオオカミとの約束を破ってしまいます。
いつになっても待ち合わせの場所に来ない事を
「もしかしたらキツネは病気なんじゃないか」と心から心配して泣きながらキツネの家に走るシーンに胸が熱くなります。
キツネと再会するシーン、オオカミの事を心配して疲れ切ったキツネが気を失いそうになり、オオカミがキツネの顔を叩きます、
その叩いた事へのオオカミの一言も粋な言い回しで微笑ましくなります。
「よろしくともだち」
みんなと仲良くしたいコダヌキ、でも見た目が怖いオオカミが苦手で輪に入れません。
仲良くなりたいオオカミが思い切って声をかけるのですが、、、
見た目が怖いだけで警戒してしまい、苦手意識を持ってしまう事は誰しもあると思います。
中身を知ればそんな事もないのに最初の一歩が難しいものです。
まして、そんな相手の方がこちらに好意をもっているのに毛嫌いしては、相手も傷付くでしょう。
コダヌキに逃げられてガックリと肩を落とすオオカミが切ないです。
自分で思っていた自分と相手が思っていた自分があまりにも違っていたからです。
でもオオカミは友達になる努力を辞めませんでした。
そしてコダヌキも勇気をだし、友達になる努力をしました。
お互いがそっぽを向かないで歩み寄る事で友達になる事が出来ました。
私達大人も苦手な相手に対して毛嫌いせずに歩み寄る努力が必要ですね。
「いつだってともだち」
森のみんなの様子が変です。
なんだかキツネの事を仲間外れにしているみたい。
コソコソ穴を掘っているオオカミとは大喧嘩になり、すねて一人で過ごすキツネですが、、、
親友の為にサプライズプレゼントで喜ばせようとするとどうしても最初は邪険な態度を取るしかありません。
サプライズがバレないようにキツネに怒鳴ったあとのオオカミの表情がちょっと切ないです。
いよいよサプライズプレゼントのお披露目の時、夜空の見える穴に座らされたキツネ、
これから何が始まるのか、ワクワクもあり、星空の幻想的な雰囲気もあり、
それでいて一人ぼっちのキツネの後ろ姿が少し切ない不思議なシーンです。
そしてそのプレゼントはなんと、「ともだちごっこ」でキツネがどうしても聴きたかったテンの笛の演奏。
「キツネから大粒の涙がボロボロこぼれはじめました」この描写からキツネの表情を想像するとジーンときます。
また、周りのみんなも協力してオオカミに対してのサプライズでもあった演奏。
森の仲間の粋な計らいにも微笑ましくなります。
「いつだってともだち、忘れていても、そうだって」
いいフレーズです。
「さよならともだち」
キツネがオオカミと出会う前の話をし始めます。キツネ村から森にやってきた時のとても寂しかった時のお話。
その寂しさからキツネはとんでも無い事を思いつき、、、
キツネが「ともだちや」をやるまでの事が描かれた物語。
寂しかった時の事をキツネが話すシーン、その気持ちがわかるオオカミが黙って話を聞くシーンがしみじみとしてとても良いです。
寂しいキツネがキツネ山に向かって「こーん」と叫ぶシーンもじんときます。
私も大学生の時に1人暮らしを始めたのばかりの時はキツネのような気持ちになりました。
キツネがともだちやを始めるように、私も友達を作ろうとガムシャラに色々な人に声をかけたのを思い出しました。
「さよならは出会いの始まり」
というメッセージが込められた作品。
大人が読んでも胸に響きます。
【最後に】
私が「おれたち、ともだち」シリーズの中で最初に読んだのが「ともだちくるかな」でした。
初めて読んだ時にオオカミの切ない気持ちが伝わってきて思わず泣いてしまいました。
そこから一気にこのシリーズのファンになり、他のお話も読みたくなりました。
なので皆さんも自分のお気に入りのお話に出会えると思いますので、全シリーズを読んで探してみるのも面白いと思います。